日本経済新聞 2004.1211夕刊 6面 「味文化」
【この駅 この味】
「い寿司 静岡・修善寺駅」 ちらし風、心こもる地アジ
伊豆箱根鉄道修善寺駅の駅弁を製造・販売している舞寿しは、駅前で長年すし屋を営んでいた。現在、東京方面にまで評判が聞こえる「あじ寿司」という駅弁は、さすがにすし屋の本領を発揮している。
今年の四月、修善寺町や天城湯ヶ島町などが合併して伊豆市になり、それを記念して発売された「い寿司」も素晴らしい。伊豆の名物にこだわったちらし風の押しずしで、彩りもきれいだ。
のせているものはアジやエビなど七種。沼津港に揚がった、小ぶりで身が締まり、甘みがある地物を使う。その特長をいかそうと酢でしめる加減は十五分程度だが、前日から塩をふり、水洗いして寝かせているため酸っぱくなく、刺身の風味を保っている。
地元の肉厚の干しシイタケを一日から二日かけてもどした甘辛煮、自家製の白身魚卵のそぼろ、ニンジンとインゲンの煮物は、どれも丁寧な調理で味付けのバランスがいい。
酢飯には、ワサビ農家から仕入れて酢に漬けたワサビの茎を刻み入れている。
伊豆市とごろを合わせ、郷土の押しずしをアレンジしたこの駅弁、作り手の心がこもった一品である。1,100円。
(旅行作家 入り江 織美) ◇舞寿し tel 0558−72−2416